グッドイヤー・ウェルテッド製法はなぜお勧めされるのか?
革靴を永く使用するにはメンテナンスがとても重要ですが、アウトソールの最高位のメンテナンスはそれそのものを交換するオールソール交換になります。そして、長く使用したい靴こそグッドイヤー・ウェルテッド製法を!と巷ではお勧めされますが、これはグッドイヤー・ウェルテッド製法の性質としてオールソール交換が可能であることが主たる理由となっています。
グッドイヤー・ウェルテッド製法はなぜオールソール交換できるのか?
グッドイヤー・ウェルテッド製法とは、コバ部分のウェルト(細い革)を介してアッパー、インソール、アウトソールとを縫い合わせるウェルト製法のうち、アッパーとウェルトとの縫い合わせが機械化されている製法です。ハンドソーンを応用する形で、アメリカのチャールズ・グッドイヤーJr.さんが考案されたから、そのようなネーミングになったそうです。現在では英国靴を代表する製法ですが、発祥はアメリカというのが面白いですね。
このグッドイヤー・ウェルテッド製法では、縫い付けは主に二段階、端的に言うとアッパーとインソールを縫い合わせるのが第一段階目で、それらとアウトソールを縫い合わせるのが第二段階目になります。オールソール交換では、これらのうち第二段階目の縫い合わせのみを解いて、新たなアウトソールに交換することになります。アッパー&インソールは維持したまま、コバ部分のウェルトを介して再度縫い合わせるのです。そのような仕様であることから、グッドイヤー・ウェルテッド製法はオールソール交換が可能となっています。
オールソール交換は無制限にはできない?!
グッドイヤー・ウェルテッド製法におけるオールソール交換について、一つ注意が必要です。それは”グッドイヤー・ウェルテッド製法であってもオールソール交換は無限にはできない”と言うことです。腕の良い職人さんでも交換は3回程度が限度と言われています。なぜでしょうか?それは、アッパー&インソールを維持するためのコバ部分のウェルトに関係します。
前述の通り、グッドイヤー・ウェルテッド製法では、アッパー&インソールとアウトソールとは、コバ部分のウェルトを介してそれぞれ縫い糸により繋げている状態です。ウェルト自体は新しいものに交換することはできません。なぜならば、ウェルトを交換するには、第一段階目のアッパーとインソールの縫い合わせまで解かなくてはならず、それをしてしまうとそもそもの木型に基づく成型が必要ですが、通常修理ではそれは不可能であるからです。ウェルト自体が交換できないことを前提とすると、アウトソール交換はウェルトは現状維持をすることが必要になります。この現状維持は容易にできるでしょうか?答えは否になります。
アウトソール交換をするためには、ウェルトをダメージなく現状維持することが重要となります。そのためには、新しいアウトソールを縫い合わせる際に極力、従来のウェルトに空いていた縫い穴に新たな糸を通していくことが必要です。しかし、いかに腕の良い職人さんと言えども、寸分違わず縫い直すことは不可能なのです。アウトソール交換を繰り返すとウェストにダメージが蓄積していきます。要するに当初の縫い穴が徐々に広がっていったり、縫製の腕が悪いと新たな縫い穴で蜂の巣状態になっていきます。それ故に、アウトソール交換には限度があり、腕の良い職人さんでも3回程度が限度と言われているのです。
お気に入りの革靴を末永く履くために
グッドイヤー・ウェルテッド製法であるから、アウトソールは交換可能であるということはよく言われていますが、それが無制限には可能でないということは普段あまり意識されていないように思われます。お気に入りの革靴であれば、永く履きたいというのが人の心情と思います。是非、「グッドイヤー・ウェルテッド製法でもオールソール交換は無制限ではない」ことを念頭に置いていただき、アウトソールへのいたわり、メンテナンスを忘れずにお気に入りの革靴を末永く履いていただければと思います。